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V65 再生記 <7>

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今回は足回りなどをまとめてご紹介します。
ブレーキポンプを前後とも、ブレーキキャリパーも3つ、オーバーホールしました。
 
ですが画像をご覧の通り、キャリパーのボルトの一部は錆びて緩まず、強硬手段をとることとなりました。で、ようやく分解してみれば中の汚いこと!!これはほとんどブレーキフルードの交換をしていない証拠です。ちなみにブレーキホースも過去交換した気配が無かったので全交換です。
 
さらに、ピストンにも錆が出てコーティングが剥がれていました。各部オーバーホールやホースの交換は想定内でしたが、ピストン交換は少し痛かったです。ブレンボのキャリパー、現行モデルはダストブーツが付いていないものもありますが、この車輌のころはダストブーツがあり、ピストンが露出したから錆びたというわけではありません。ブレーキフルードを定期的に交換していればこれは防げると思います。
 
ブレーキフルードは吸湿性が高く(DOT4以下のグリコール系のもの)、そのためブレーキ内に水分が混入しても、ブレーキフルードに吸われるため沸点が低い水という姿のままでいることはなく、ゆえに極端な制動力低下を防げるのですが(ブレーキライン内で水が蒸発して気体になるとエアが入ったことと同じになるので)、ブレーキフルードを長く使いすぎると吸湿も進んで接している各部品を傷めやすくなります。また吸湿したブレーキフルード自体も沸点が下がってしまいます。


 
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上の画像は前に撮っておいたものですが、この車輌はまだ納車から最初の車検も受けていないのにリアブレーキのリザーバタンクの中が真っ黒でした。いざ交換作業を始めると黒いブレーキフルードがいつまでも出てくる。ブレーキライン内のブレーキフルードまんべんなく劣化していたのでした。
 
新車を売って、お客さまにお渡しする前にロクな整備をしていない証拠です。モトグッチリパラーレは正直、新車販売数はものの数ではありませんが、買っていただいた方々、伝票を引っ張り出してみてください。納車整備料をきちんといただいておりますが、そのかわり、納車整備の中には全ての油脂類とブレーキフルードの交換が含まれています。
 
国産車ではありません。メーカーの工場で完成してからしばしのプール、箱詰め、港へ陸送、船で日本へ、もろもろの手続きを経て、お客さまがついたら納車。各オイルだって何ヶ月か経っています。2度の赤道通過だってしています。ましてやブレーキフルードは車輌組み立て時に入れられるのではありません。ブレーキメーカーでマスター・ホース・キャリパーが連結されてブレーキフルードも入れられて納入されるのなら、もっと時間が経過しているはずです。
 
この真っ黒ブレーキフルードの車輌は納車整備料は支払われていたのでしょうか?こういう車輌に接すると、新車の初期クレームのなかには販売店の納車整備で防げるものがたくさんあるような気がします。メーカーにとってもこういった面の改善は、遠回りであっても販売促進にも利すると思うのですが、まあ、たくさん売ってから言ってくれ、と言われそうですね。
 
ともかく、ブレーキフルードの定期的な交換は私のV65のような余計な出費を防ぐことにもつながります。ブレーキの整備は無視していてもそこそこ効きますし、車検も受かってしまいます(ただし車検合格は次の2年間の安全を保証するものではありません)。でも無整備はいつか必ずなにかのかたちでしっぺ返ししてくるはずです。


 
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いろいろ不具合の多いこのV65ですが、フロントフォークのダンパーはまだ機能してくれていました(ホッ)。でもそのかわりインナーチューブに錆が浮いていたので悲しいかな・・・・・交換します。インナーチューブの画像で右の2本が古いもの、左が新品です。ポチポチ浮いた錆が見えるだけのどうでもいい画像ですが、出費が大きかったので載せずにはいられませんでした(笑)
 
さて問題なのは右上の画像です。差し示しているカラーが一部潰されていました。
これはアウターチューブ内の様子を考えずにおおざっぱに組んだあと、切り欠きの位置があっていないにも関わらずドレンボルトを強引にねじ込んだ痕跡です。そうならないように、ドレンボルトを位置決めとして活用しつつ、本締めの前にはボルト穴から切り欠きの位置が正しく収まっているか確認する、など留意が必要です。
 
またアウターチューブとダンパーを結合するには下から10ミリ径のボルトで締めるのですが、アウターチューブのボトムのボルト穴には当然「遊び」があります。なのでアウターチューブとダンパーの中心が多少ずれて組まれることも可能なわけで、そうなると一見ちゃんと組まれているようでも、インナーチューブとアウターチューブが正確に平行に作動せず、ストロークさせるとフルボトムに近づくほど摩擦が増えてしまいます。
 
ではどうやってセンターをそろえて組むか?
ダンパーはインナーチューブの上から、アウターチューブは下からセットしてボルトで連結されます。ダンパーはまだインナーチューブにねじ込まずにボルトは手で締める程度の仮組みをします。当然組む前に画像のようにオイルシールを傷めないようにオイルシールとカラーにたっぷりグリスを塗ります。インナーチューブのボトムにはモリブデングリスを塗りこんで、オイルも塗っておきます。カラーの切り欠きが回ってずれないようにドレンボルトも仮に入れておきます。
 
仮組みしたら、アウターチューブをフルストロークさせます。・・・つまり縮めるわけですが、インナーチューブにまだねじ込んでないダンパーも一緒に上へあがっていきます。最後にインナーチューブのボトムがカラーにぶつかりますが、その時センターが揃っていなければゴスッと違和感を感じることができるはずです。カラーはフルボトム時にインナーチューブの底つきを防ぐとともに、テーパー加工されているのでそれを利用してセンター出しができるのです。つまり仮組み状態なので何度かコンコンと押してやれば、カラーが(そしてダンパーロッドのボトムが)アウターチューブ内で正しく中心に収まります。そこで初めて本締めするのです。本締めしたら念のためドレンボルトを一度抜いて切り欠きがずれていないか確認します。
 
こうして組めば、ストロークさせると気持ちよく動いて最後にトンと軽やかな音を出してボトムするはずです。余分なグリス等を拭き取り、フォークオイルを規定量入れてダンパーも締め込んだら完成です。


 
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続いてホイールです。
フロントのリムは表面が傷んでいたので再メッキして、スポークも新調しました。リアは・・・・・・16インチリムがついていたのですが、用途に即したタイヤの選択肢のこともあって17インチに換装しました。現行V7のリムを取り寄せて、こちらもメッキしました。ちょっと出費がかさみましたが、見た目だけではなく耐候性が増すことに期待しての決断(笑)でした。
 
少し無理するとグニャグニャ狂ってしまう自転車のホイールと比べて、オートバイの硬いリムはざっと組んだだけでそこそこのカタチになりますが、もちろんその先は縦振れ、横振れを丁寧にとっていきます。ここはもう、丁寧に、と言うしかありません(笑)


 
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ホイールが組みあがったら、チューブレス加工をしました。「えっ、そんなことできるの!?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、実は以前お客さまから「こういうキットがあるから」と依頼されてやったことがあったのです。こういうやり方があるのか〜!というアイデア商品でした。
 
以前よりリパラーレではチューブが入っていたキャストホイールのモデル(ルマン1000以前、ほとんどがそうでした)にはチューブレス化することをお勧めしてきました。リムに大きな傷など密着性が乏しい場合は除きますが、まず問題はありません。チューブレス化する最大のメリットは、パンクしても瞬時に空気が抜けないことです。出先でパンクに気づいても刺さった異物を抜かずに置けば、空気の漏れはゆっくりなのでなんとか走り続けることができます。もちろんそれはあくまでも家まで、整備工場まで、安全地帯まで、という非常走行です。それなりに注意も必要です。
 
そしてこのチューブ用スポークホイールのチューブレス加工、私はいまのところ4本実施して成功率100%ですが、それなりに神経を使う、雑にやれば失敗もあり得る加工のように感じました。
またこの先タイヤ交換をしたりとか、さまざまに使用するうちに気密性能が変化しないかどうかもまだ体験していませんので、いまの時点で「リパラーレ推奨」ということでご紹介するものではありません。
 
極端な話、こういった加工を施すと何かの場合にメーカー保証が受けられなかったりということも考えられますので、ご依頼があればお受けしますが、いろいろご心配な方はやめておいたほうが良いかもしれません。
 
画像の最後はホイールのラバーダンパーを交換したところです。P系はファイナルギアのフランジがこのラバーダンパーに差し込まれています。そしてV系にくらべてよく磨耗・変形します。
ラバーダンパーはチェーン駆動・シャフト駆動ともにだいたいの市販車に装備されていますが、チェーン自体にも多くの遊びがあってショックが緩和されるチェーン駆動に比べて、シャフトドライブ車は駆動力がよりストレートにホイールに伝達されるので、ダンパーの仕事が重要です。フランジの爪を2つのラバーダンパーで挟み込むようになっていますが、おもに進行方向側のラバーダンパーがよく減るようです。タイヤ交換のときなどにチェックして磨耗が進んでいたら交換しましょう。
 
タイヤ交換時のチェックといえばホイールベアリングも同様ですが、ホイールベアリングがよくイカレるという方は、中のカラースペーサーの交換をお勧めします。
ホイールベアリングのアウターレースはホイールまたはハブの定まった位置に納まります。もし中のカラースペーサーが繰り返したアクスルナット締め付けやベアリングの異常(摩耗による振れなど)による潰れで規定値より短くなっていたら、ベアリングを新しくしてもアクスルナットを締めるとアウターレースの位置よりも奥にインナーレースが押し込まれるように圧力がかかってしまいます。その状態で回転させれば早期にベアリングの異常磨耗が進んでしまうのは自明の理でしょう。
 
モトグッチに限らずですが、「よく壊れるんだよね〜」というようなセリフの裏にはこのようなもっともな原因とそれに気づかなかった至らなさとが隠れていることがたまにあるようです。


 
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