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California 1400

去る1月27〜28日、モンテカルロでピアッジオグループのディラーミーティングが開催され、イタリア内外から2000に迫る代理店が出席しました。毎年開催されるこのミーティング、今年はグループ代表取締役のロベルト・コラニンノからモトグッチのプロトタイプが2台発表されました。

MOTOGUZZINEWS
1台は、発売されれば1960年代から活躍したロードラ・レゴラリータ以来のスクランブラーモデルとなるV7 Scramblerです。メーカー各社からオフロード向けモデルが発売されるようになって以来、スクランブラーというカタチがほとんど消えてしまっていたので新鮮でもあり、なかなか魅力的です。

ところで、カリフォルニアファンの私としてはもう1台のプロトタイプのほうに、より注目せざるを得ません。California1400です。
モトグッチの稼ぎ頭であったカリフォルニアが永く登壇しなかったのは寂しいことでした。カリフォルニアは最後のモデルが2バルブ&トンティフレームで終わったままでしたので、ニューモデルをどのエンジンとどのフレームで構成されるのかが注目のまとでした。

California_1400.jpg

さてこのプロトタイプは先行スポーツモデルと共用のバックボーンフレームに、大きくなったキャスターアングル、長いリアスイングアームとツインショックアブソーバー、低く広く薄く設計されたシート、などなどを身にまとい、「アメリカン」なフォルムをこれまでより強く追求しています。もともとモトグッチ・カリフォルニアは「マカロニウェスタン」などと揶揄され、ただし私はそれをむしろ肯定的に受け止めていましたが、今回のカリフォルニアプロトタイプも、たとえばサスペンションストロークが短めに設定されている様子を見ても、フォルムはアメリカン、走りはイタリアン、の「快走のマカロニウェスタン」に仕上がっているものと思われます。

リアスイングアームは見た目の問題以外に、長くしたことでハンドリングを安定感あるものにしています。そして長くなっただけでなく、ツインショックであり、ブレーキデイスクを左側に置いた新設計です。シャフトドライブのクセを軽減するCARCシステムは当然採用していると思いますが、リアキャリパーが反対側に移動しているのでファイナルギアケースも新設計になっています。



さあいよいよモトグッチ初の1400ccエンジンに目を向けてみましょう。
まず、ますます厳しくなる排出ガス規制をクリアしつつトルクを得るには、いまのところ排気量をあげてゆくしかありません。ガスを濃くしておけばトルク感は得られます。しかし排出ガス中のHCが増えてしまうので、メーカーはこの手を使えません。結局、規制をクリアできる程度に薄い混合気を大量に燃焼させることが必要となるのです。

ではどのように排気量をあげているのか?
この1400エンジンはベースとなる1200SPORT4Vとの外観比較から、ピストンストロークに変化はありません。となるとボアが変わっているはずです。

1100と1200、クランクケースの比較
1200SPORTの95mmX81.2mm(ボアXストローク)のシリンダーを載せるクランクケースは、1100ccまでのクランクケースがボア92mmで限界を迎えたあとを受けて登場したので、当然さらなる拡張の余地が与えられています。
このエンジンのボアストロークが仮に104mmX81.2mmとしたら排気量は1378ccになります。10mmに迫るボアアップをしたということになるわけです。

タンク(見えているのはタンクカバーと思われますが)に干渉するほど大きなヘッドカバーが必要なわけは、排出ガス規制に対応するための可変バルブ機構が収められているのか?、またはかつてカリフォルニアに一度採用された油圧タペットをローラーを装備させて復活させたか?(油圧タペットはクリアランスゼロになるので油膜が切れやすいため偏磨耗が生じやすく、転がりながらオイルを巻き込むことができるローラーの併用が効果的です)いろいろと想像は膨らむのですが、まずもって4バルブヘッドならセンターにあるべきスパークプラグの処理方法が画像からは全く見えていません。

とすると見えている黒いカバーはヘッドカバーとプラグキャップと、ひょっとするとイグニッションコイルなどを合わせて覆っているのかもしれません。全体のデザインのなかでエンジンの形状が大きな比率を占めるモトグッチならではの、美観のためだけのカバーなのかもしれません。

そして100mm超という巨大な燃焼室内をきれいに燃やさなければならない4バルブヘッドですが、これは1200cc4Vからなのですが、シリンダーヘッド組み付け前に上死点時のピストンヘッドとシリンダー上面との差を特殊工具で計測して、それによって3種類用意されたヘッドガスケットを選定するようになっています。
そこまでスキッシュエリアを微調整して混合気をコントロールしないと空冷ビッグボアエンジンで規制をクリアしつつパワーを得ることが厳しいのです。ちなみにスキッシュ(squish)とは「押しつぶす」ことです。ピストンの上昇とともに狭くなってゆくピストンヘッドと燃焼室円周部のすきまによって、混合気を押しつぶして燃焼室中心に押しやりつつ混合気をかき回す効果があります。



エンジン周辺を見てみます。
エンジンの前面には縦長のカバーが見えますが、オイルラジエターが内臓されているように見えます。

エキパイは太く見えますが、2重管であるか、エキパイカバーが付いているのかも知れません。いずれの場合もエキパイを高温に保つ効果があります。
排気ガスは高温であるほど流速が高く、またキャタライザーは高温において排気ガスの浄化を促進する性質があります。逆に低温ではほとんど還元能力がないので、特に日本の排ガス規制のように始動直後の測定が厳しいと、いかに始動後早くにキャタライザーの温度をあげるかが重要になります。

恐らくキャタライザーはサイレンサーに内臓され、トランスミッションの下には低速トルクを確保するためのチャンバーが置かれているでしょう。



いろいろと書いてみましたが、いまのところモトグッチからスペックの公表はなく、モトチクリズモ誌も一報のみで詳報はしていません。もう少し時間がたてばわかってくるでしょう。NEW1400ccエンジンはカリフォルニアのあと、必ずスポーツモデルにも搭載されてゆきます。楽しみに待ちましょう!


mas

Prototipi per il futuro di Mandello

”マンデッロの将来の為のプロトタイプ”

2011年1月31日Montecarloで開催された、デーラーズミーディングで発表されたCalifornia1400です。

他にV7スクランブラー(懐かしい名称です)も発表されました。


California_1400__prototipo.jpg
T.Shiga

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