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排気ガスとバルブタイミングNo.1

排気ガスのHC(ハイドロカーボン/炭化水素) No.1

-------これからの記述はMOTO GUZZIに限らず一般の二輪車にも言えることです。Diagram.gif

昨年2008年9月より二輪車の排気ガス規制がスタートしました。この日本の排気ガス規制は世界で最も厳しい規制です。
最初は二輪車は規制対象外でしたが、国土交通省で全ての車両の排気状況の調査段階で二輪車のHC(俗にガソリン成分)排出量が多い事が判明しまして排気ガス規制対象となりました。

二輪車は他の車両よりHCの排出量が多いのは二輪車の高出力が起因しています(リッター馬力が高い)、製造者は高性能高出力を目指して二輪車を設計製造していますが高出力を得る為には、より多くの空気と燃料(混合ガス)を吸入し、圧縮し、最適なタイミングで点火し、混合ガスを燃焼・膨張させて出力を得て、排気し再び新気混合ガスを吸入します。
この4工程全てにHC(燃え残りガソリン)を発生する要素を含んでいますが、多くの空気と燃料(混合ガス)を吸入するには出来るだけ長い間吸気バルブを開けている事が必要です。又、多くの新気混合ガス吸入する前には排気工程での全ての排気ガスを排出する為に排気バルブを出来るだけ長い間開けシリンダー内の圧力を下げる事が必要です。つまり、高出力を求めればバルブの開弁時間を長くする必要があり上図のバルブダイヤグラム的に言い換えればバルブ作動角度を広くする事となります。

何故、バルブ作動角度を広くするとHCが増えるのか?
それは二輪・四輪問わずアイドリングから最高回転数まで幅広くエンジン回転を使用する乗り物だからです。

参考までに下記にMOTO GUZZI主要の各モデルのバルブタイミングを記します。
*OHV 2バルブ****
:850LeMans------
吸気開・上死点前20度---吸気閉・下死点後52度
排気開・下死点前52度---排気閉・上死点後20度
OR(オーバーラップ)----40度

:LeMans1000-----
吸気開・上死点前29度---吸気閉・下死点後60度
排気開・下死点前58度---排気閉・上死点後31度
OR(オーバーラップ)----60度

:V11Sport--------
吸気開・上死点前22度---吸気閉・下死点後54度
排気開・下死点前52度---排気閉・上死点後24度
OR(オーバーラップ)----46度

*OHC 4バルブ****
:DAYTONA1000---
吸気開・上死点前23.3度---吸気閉・下死点後57.3度
排気開・下死点前49.3度---排気閉・上死点後12.3度
OR(オーバーラップ)----35.6度

:MGS-01---------
吸気開・上死点前36度---吸気閉・下死点後70度
排気開・下死点前64度---排気閉・上死点後28度
OR(オーバーラップ)----64度

*OHV2バルブ-ツインプラグ****
:BREVA1200------
吸気開・上死点前24度---吸気閉・下死点後52度
排気開・下死点前54度---排気閉・上死点後22度
OR(オーバーラップ)----46度

*OHC 4バルブ****
:GRISO 8V-------
吸気開・上死点前36度---吸気閉・下死点後62度
排気開・下死点前58度---排気閉・上死点後30度
OR(オーバーラップ)----66度

:1200SPORT 4V---
吸気開・上死点前40度---吸気閉・下死点後60度
排気開・下死点前54度---排気閉・上死点後34度
OR(オーバーラップ)----74度

:1200SPORT4Vは常識以上のオーバーラップ角度を持っています。排気ガス規制をどの様にクリアーしているのか、
さて、?

上記のバルブタイミングはスポーツモデル故の高出力を求める為に設計者が考えましたが、このバルブタイミングが低中回転を使用する時にはHC(燃焼させる事が出来なかったガソリン)排出の原因となります。

参考図のダイヤグラムをご覧になればお判りと思いますが、吸気・排気の各バルブが同時に作動し各ポートが開いている時があります。これをバルブのオーバーラップと言いますが、新気混合ガスや排気ガス等の気体による弾性と慣性の法則の為流速の作動遅れが発生します。特に高回転高出力を得る時にはバルブの作動は早めに開き始め、遅めに閉じ始めても良いのです、必要不可欠の結果オーバーラップが必要となります。

このオーバーラップは排気ガスを排出しながら排気バルブが閉じ始めている時に吸気バルブが開き始めますが、このときに新気混合ガスの一部が排気ポートを通り排気パイプへと排出されます。これはガスの吹き抜けですが、この吹き抜けはオーバーラップの大きい高出力エンジン程低中回転時に多く発生します。
当然、新気混合ガスが吹き抜けますからパワーロスとなりますので、それを補う為に排気パイプとサイレンサーの間に膨張チャンバーを設け排圧を保持しガスの吹き抜けを抑えているモデルもあります。

一方、高回転時にはピストンの動きと吸・排気ガスの流速がバルブタイミングとシンクロし設計者の意図した通りに流れ、吹き抜けは殆んど生じません。 エンジンはパワーバンドに乗り “カムに乗るエキゾーストノート”を発し快調に走ります。
他に排気音の大きいコンペティションマフラーを装着した場合は一般に使用する低中回転時にはガスの吹き抜けは、より顕著となり低中回転トルクの低下とより多くのHCを排出する事となります。

以上がリッター出力の高い高性能二輪車の排気ガスにHCが多い理由の一つですが、他にもHCが多くなる理由がありますが、それは次回と致します。

------次回のもう一つ理由はライダーの心がけ次第で随分と防げるかも知れません。


RIPA-Shiga

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