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GUZZI Tempo <3>

さあそれでは、いよいよモトグッチのエンジンの動きに“1/f ゆらぎ“が存在しているかどうか、突き止めなければなりません。
機械の動きのなかに“1/f ゆらぎ”が発生することはあるのだろうか。“ゆらぐエンジン”・・・・・・・。おっと、ここで「イタ車は不完全な工業製品ゆえに“ゆらぐ”こともあるだろうさ」などと考えた方はいらっしゃいませんか。そういう古色蒼然たる発想しか持ち合わせていない方はまずここからご退席願いましょう(笑)。


manuale

冗談はさておき、エンジン・ゆらぎ・エンジン・ゆらぎ、とこの2点を突き合わせてみたらモトグッチエンジンの2つの気筒は不等間隔燃焼していることに思い当たります。4ストロークエンジンはクランクシャフト2回転でひとつのサイクルを営みます。つまり、クランクシャフトの回転角であらわすと720度になるのです。その燃焼の様子は、まず左のシリンダーが燃焼してから270度回って右シリンダーが燃焼し、一度左シリンダーを通過して450度回ったところで再び左シリンダーが燃焼する。勘違いされませんように、270度ー90度ー270度ー90度ではなく、270度ー450度ー270度ー450度というテンポで燃焼し、クランクシャフトを押し回しています。

並列エンジンの2気筒車・4気筒車・6気筒車やボクサーツインなど規則正しいテンポで燃焼を繰り返すエンジンに対して、新旧モトグッチに共通するエンジン形式、すなわち90度Vツインの不等間隔燃焼が“1/f ゆらぎ”であるなら、乗り手がそこに快感を感じ取っているのではないか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この想像はとてもエキサイテイングなものだったのですが、冷静に考えればこの不等間隔は“規則正しく不等間隔”なのであって“不規則にゆらぐ”こととは全く異なっていることであり、残念ながら先にあげた“1/f ゆらぎ”の定義のひとつ“発生を完全に予測できない”に当てはまらなかったのです。


fabbrica

困りました。ではモーターサイクルのエンジンに“1/f ゆらぎ”があらわれる可能性は微塵もないのでしょうか。先にあげた他の定義に“大量生産品や機械加工されたものには現れない”というものがあります。ただしこれはおもに生産品の外観を指していると思われます。ならばエンジンの作動のなかで不確実な要素・計算外の動きを探せば“1/f ゆらぎ”に結びつける余地があるのかも知れません。たとえばキャブレターのところで触れたジェットニードルの揺れは不規則な“ゆらぎ”と言えまいか。自然界を形成するもののひとつである“空気”の影響を受けた揺れだからです。そして重力や慣性力の影響を受けたガソリンの動きや、動作する機械に不可欠な“アソビ”の存在などなど。さらには、機械を、モーターサイクルを操るのは生体である人間なのです。アクセルワークに“ゆらぎ”があればエンジンの反応にも“ゆらぎ”が生じる可能性があるかも知れない。

ただしこれらはエンジン全般にいえることであって、またしても残念なことにモトグッチならではの快感発生源とはいえません。乗り物への“1/f ゆらぎ”理論の研究&フィードバックはメーカーにお任せして別の方向からモトグッチだけの“なにか”を再び探さねばなりません。でもここまで考えてきてモーターサイクリストは、人間は、すくなくとも“1/f ゆらぎ”のような微細な“ゆらぎ”を感じ取ることのできる生物なのだということはわかりました。


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“1/f ゆらぎ”との関連は見出せなかったものの、不等間隔燃焼をする90度Vツインであるということが新旧モトグッチに共通し、そして他者にない特徴であることには変わりありません。“不等間隔”が残されたキーワードになってきました。そこで生活のうちに不等間隔のリズムを探してみたのですが、これが意外とないものなんです。
踏み切り、“カン・カン・カン・カン”
脈拍、“トク・トク・トク・トク”
ウィンカー、“カチ・カチ・カチ・カチ”
あ、ウィンカーの作動が不等間隔だというあなたのモトグッチはリレーと電球が合っていませんよ(笑)

さて、モトグッチエンジンの脈動は音にするとどんな感じになるのでしょう。等間隔なら“360度ー360度ー360度ー360度”で“タン・タン・タン・タン”。“270度ー450度ー270度ー450度ー270度ー450度”ならば“タッタン・タッタン・タッタン”くらいでしょうか。「タッタン・タッタン・タッタン」と、口に出してみると・・・・・・・・・・・ひとつこれに似た音の存在に気づきました。


cuore

それは、心音です。
不等間隔で刻む心音のテンポ。これはどんなリズムなのか調べていたら面白いことがわかったのです。がその前に、脈拍は“トク・トク・トク・トク”なのに心音は“タッタン・タッタン・タッタン・タッタン”。心音は何の音なのか知っておかねばなりません。

心音はよく“ドックン”とも書かれますね。“タッタン”よりは“ドックン”のほうがイメージしやすいでしょう。さて“ドックン”は“ドッ”と“クン”の2つの音に分離されます。“ドッ”を飢擦函◆肇ン”を恐擦箸いい泙后飢擦録澗,亮縮が始まって動脈に血液が送り出されると同時に房室弁(心臓への入り口の弁)が閉まる音で、恐擦録澗,亮縮が終わって動脈弁(心臓からの出口の弁)が閉まる音なのです。このあと再び血液を房室弁から吸い込むために心臓の拡張が始まります。それで、飢擦鉢恐擦里△い世鮗縮期、恐擦鉢飢擦里△い世魍板ゴと呼びます。


guzzi

モトグッチの不等間隔燃焼に似ている心音のリズム。でも似ているといってもどれだけ似ているのか、それを目に見える数字の形にできるのだろうか。つまり収縮期と拡張期の比率がわかればありがたいと思っていたのですが、数値化の心配は杞憂に過ぎず、その答えは割りとあっさりと収縮期が約0.3秒、拡張期が約0.5秒、とわかったのです。これは心臓周期が約0.8秒である成人の平常脈拍時の数値です。ちなみに脈拍が速くなってゆくときは、収縮期はあまり短くならず拡張期が徐々に短くなってゆきます。

0.3秒と0.5秒、3:5の比率。
モトグッチの左右シリンダーの燃焼間隔270度と450度、は・・・・・・・3:5

なんと人間の心音と90度Vツインエンジンの脈動は同じタイミングだったのです。赤ん坊は母親の心音を聞くと安らぐときいたことがあります。ならば、心音と同じテンポのモトグッチ・エンジンこそが快感発生源だと考えられないでしょうか。



(続く 3/4) mas

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