モトグッチのオイル交換の方法が、雑誌やHPなどに時折掲載してありますが、勘違いをしている部分もある様です。モトグッチと他メーカーとの違いがある為でしょうが、間違った方法でメンテナンスをした場合、バイクに不都合が出る可能性がありますので「正しいオイル交換とレベルチェックの方法」をご説明致します。

メンテナンスに興味をお持ちの皆さんは、既にオイルドレンとオイル注入孔の場所や、オイルスティック(Dip Stick)のマークの意味は既にご存知だと思いますので省略します。

* エンジンオイル
(モトグッチの850LM-IIを除く全モデル)

エンジンオイルのオイル量のチェックはオイルスティックを全てねじ込んでチェックします。いままで、さまざまなメディアを通しての、メンテナンスの記載ではスティックをただ、差し込んでと記してありますが、間違いですからご注意ください。(勿論 車体は直立に立てた状態でチェックします。)この事はMOTO GUZZI社のオーナーズマニュアル及びワークショップマニュアルに明記されています。



ではなぜ、オイルスティックを全てねじ込んでチェックするのか。 それは、オイル面に対しオイルスティックを斜めに差し込んでチェックしますので、その差込角度が重要になる為です。

●差し込み角度が深いとオイル量を実際より多く表示しますので実際にはオイル量が不足しています。→[fig.a]

●差し込み角度が浅いとオイル量を実際より少なく表示しますので実際にはオイル量が多すぎます。→[fig.b]

●正確なオイルチェックの方法です。→[fig.c]

※オイルスティックをネジ込む事によって誤った角度でチェックしてしまうのを未然に防いでいます。




尚、オイルラジエターが装着されたモデルでは、オイルラジエターとオイルパイプを取り外し、それからオイルラジエターを逆さまにして、オイルを抜かなければなりません。(HP/テクニカルの項参照) 又、オイル交換後のオイル量チェックは、エンジンを始動しオイルラジエター内部へオイルを満たしたのち、オイルチェックを行います。(サーモスタットが付いていますので、オイル温度が上がらないとオイルはオイルラジエターへ回りません。多少エンジンの暖気が必要です。)


* トランスミッションオイル

1] エンジン型式—V系&K系タイプ[VE. VF. VV. KA. KE. KK.] 等
オイルレベルホールは、トランスミッションケースの右側に在りますが、オイルを注入するときに、レベルホールより溢れ出るまで入れ続けてはいけません。 注入孔から入ったオイルが、レベルホールに到達するまでタイムラグがありますから、溢れ出た時にはすでにオイルが入りすぎています。 入りすぎた時は、必ずレベルホールから出なくなるまで溢れ出させて下さい。ミッションオイルが多すぎると、クラッチレリーズのプッシュロッドのラバーブッシュを通り、オイルがクラッチのセンター部へリークする事があります。

2] エンジン型式—P系[PA. PB. PC. PE. PS. PT.] 等
オイルレベルホールより3mm-5mm程低く設定してください。
長時間の高速走行時に、トランスミッションケース上部に取り付けてあります、ブリーザープラグよりオイルが出てくるためです。Imola-II/Capri/Targa/LarioではImola/Monza系よりレベルホールを低いところに開けてありますが、以上に述べましたトラブルの可能性がありますので、オイルレベルはレベルホールより3mm-5mm程度低く設定してください。





*ファイナルミッションオイル

1]エンジン型式—V系&K系タイプ[VE. VF. VV. KA. KE. KK.] 等
これらのタイプのファイナルケースは、ブリザープラグがない密閉型のケースです。密閉型ですから、特に高速走行時に内圧が上昇した際に、オイルリークが起きる可能性がありますが、原因のほとんどはオイルを入れすぎた事によって起きています。

MOTO GUZZI社が密閉型にしたのは、ケースの上部に付いているオイル注入孔からケース内に向けてラビリンスが無く、ダイレクトにファイナルミッション内部に通じていますので、ブリーザープラグ(ブリザーホース)を設けた場合には塵や水分が混入しやすい事に配慮したものと思います。
また、 Daytona/1100Sport/Centauro/V11Sp.を除き、ファイナルケース内部はスイングアームパイプ内部と一体になっており、ファイナルミッションオイルは、ドライブピニオンギヤをホールドするベアリングを潤滑しながら、スイングアームパイプ内を移動したり、ケース内へ戻ったりしています。すなわち見掛けよりファイナルケース容量は大きいので、急激な内圧の変化が起こりません。敢えて内圧の変化に備える必要が無い訳です。

これらの事から先にも述べましたように、構造上の原因でオイルリークが起きているのではありません。そして、以下の注意が必要です。つまり、オイル交換時に注意する事は、排出する古いオイルは時間を掛けてよく抜く事と、新しいオイルを注入する際は絶対に多目には入れない事が重要です。古いオイルがどうしても内壁に付着して抜け切らないので、20cc程少なくても良いくらいです。さらに、Daytona/1100Sport/Centauroはファイナルケースの容量が少ないのですが、同様に注入量に注意している限りオイルリークは起きません。 以上の注意事項を守ってもオイルリークをする様ならばオイルシールの不良、又はベアリングの不良若しくはベアリングインナーレースとドライブフランジのクリープが考えられますから、プロへの整備依頼をお薦めします。 又、必ずオイルの粘度指数を守り二硫化モリブデンを規定量添加して下さい。

2]エンジン型式—P系[PA. PB. PC. PE. PS. PT.] 等
Imola/Monza等は粘度指数以外特に注意事項はありませんが、Imola−II/Capri/Targa/Lario等は、スィングアームが長くリヤショックも長い物が装着してあります。このためスィングアームがやや下方へ向いており、オイルレベルホールを基準にオイルを注入しますと、設定されたオイル量に満たないため、ファイナルミッション内のドライブピニオンをホールドしている、エンジン側に近い方のテーパーローラーベアリングが潤滑不足により、損傷する可能性があります。

MOTO GUZZI社では、下図の様にスイングアームを水平に保って注油する様に説明しています。





ちなみに、P系のファイナルミッション内部とスィングアーム内部はオイルシールにより遮断されています。又、必ずオイルの粘度指数を守り二硫化モリブデンを規定量添加して下さい。

*終わりに

以上、正しいオイル交換とレベルチェックの方法をお知らせしましたが、単なるオイル交換だけでも、国内の整備に対する慣習と異なるところがあります。 整備する側が良く理解する事が必要なのです。 整備とは、整えて備えると書きます。その為には、このような違いを良く理解して整備する事が必要です。 確かなプロへの整備依頼をお薦めします。


 
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